遠慮のない人と遠慮のない話をして
遠慮のない暮らしをしたいと思いました
顔の醜い人は顔をナオシマショウ
顔は何度でも直せます
美しい女と男だけの世界をツクリマショウ
汚れていない人と穢れのない話をして
穢れのない暮らしをしたいと思いました
青い果実をムサボリマショウ
果実は幾らでもあります
若い女と若い男だけの世界をツクリマショウ
愛する人に仕え貴方に身を埋(うず)め
こころやさしく暮らしたいと思いました
不幸の影をオオイマショウ
愛の布は繰り返し繕えます
欠けて往くものと曇るものをコバミマショウ
望みのない戦(いくさ)に望みのない国の形
甘い調べに囚われます
玩具の体を渦中にササゲマショウ
美しい人形は幾らでも作れます
煙った夜と狂った街をモトニモドシテ
一つの定めに一つの光に依りたいと思いました
誰よりも先に胸を刺します
手蔓を求め生き延びる部屋にはカエリマセン
文字なら幾らでも書けます言葉なら幾らでも話せます
人は幾らもいません
寄せる波と崩れる砂遠い国にイキマショウ
後先も考えずに貴方の為に
貴方だけの為に立ち止まりたいと思いました
知り尽くす事が身の置き所を失う事だとシラズ
許す事が自由を奪う事だとシラズ
異なる道筋は争う程あります
易きを避けて役に立ちたいと思いました
色を失くす六月の
迫る誌面の畸形をカクシマショウ
預けた日は常に遅く暮れます
惜しむ交わりも振り返るいのちも服毒ニヒトシイ
かもめは戸惑いに空を塞ぐ
空は其れをいとおしみ憂えを成す
人と地を等閑(なおざり)にシマショウ
名は砂漠を流離(さすら)い争いは砂に舞います
尽きない世の渇望水に流し星と流れ誰をナグサメマショウ
実体のない恵みに実体のない果実
赤く熟し燃えて終始匂う
望みを離れ乾いて欠刻をユウシマス
野辺に咲く偽りの白い花
人を離れ乾いてくちびるをカキマス
傍らで恥を繋ぎ己を低く定め
作り事で苦汁を舐めたいと思いました
朝の光に揺れ露にムスバレマショウ
川を忘れて海へ人は往きたい
人と人の間の赤い海へタドリツキタイ
ドアを出て貴方の為でもなく私の為でもなく
重んじるものや手の届かぬものに触れようと思いました
危ぶむほどどっちつかずで見当チガイデス
通りは翳るばかりです
触れるとみな無形、非さえカサネラレナイ
愛する人の声を聞き愛する人に気付かれず
夕暮れの雨に打たれたいと思いました
痛んだ感傷をタタミマショウ
僅かな余白にさえ書き記す昔の物語り
一度限りの闇、トジコメラレタ厚い壁
幸せの種を撒いて水をやって
幸せの花を食卓に飾ろうと思いました
不幸な人は幸せをカイマショウ
貴方の幸せはお金で買えます
幸せとお金だけの不幸せな家をツクリマショウ
初めての恋を誰にも知らせたくなくて
浴びる程のお酒を飲もうと思いました
蝋燭を点して獣にナリマショウ
恋など幾つもあります
私とナルシズムだけで船に乗り小波に筋道をミダシマス
気付かない内に疎んじられ
気付かない内に忘れられたいと思いました
愛の悦びに比べられるものがミツカリマセン
恋など幾つもあります
男など幾らでもいます
痛い思いなど放ってオキマショウ
貴方の絵を描き貴方の家に帰り
私が欲しいものを置き去りにした事をシリマシタ
一つ掴むと一つ落とし一つ拾おうとして皆投げ出している
人の顔など幾つもあります
此処から逃げる場所はイクラデモアリマス
自由の場所を占めるのは頼りない疵痕
自由を描き図形の上を行きつ戻りつするツバメになりたいと思いました
ツバメは地上に秩序を期待しながら戦場をミザルヲエマセン
青い空は地上に絶えた都市を見ながら
人が歩く一筋の道の上にヒロガリマス
激しい恋を終え才能を捨て結婚して
人間らしい輪郭でいようと思いました
23歳までに込み入った重い荷はナゲダシマショウ
代わりに人の子をお腹に創造しましょう
神様になるには子供を宿すのがチカミチデス
21:09 2012/06/15金曜日
Good-bye to All That Robert Graves 成田悦子訳
-
僕が新兵将校として出会った連隊史の最も近接した断片は記章だった:五つの黒いリボンの扇子のような束、それぞれ2インチの幅、7,5インチの長さ、鳩の尾で終わり。扇が広げられているに違いないその角度は連隊のしきたりによって厳密に規定されていた。記章は上着の色の黒に縫い合わせられていて、王室ウェルシュだけはそれを身に...
1 日前