1庭はもう見えない
窓辺に口の聞けない形に器を並べる
踏み躙られた舌や捨てた唇を入れてある
2夢中で胸を抱き締めた靴音はもう聞こえない
唯一度寛ぐこともなく
欠けた時を埋め合わせるには余りに急で
3自由の地に生まれた人はいない
思うままに生きる人もいない
思いを手にすると皆有りもしない
4生体実験を知る人はいない
「ありません。」と言うと皆有りもしない
「知らない。」と言うと有った事は無かった事になる
「言わない。」事にすると何を言っても良い
5生体実験を好む人は良い人に見せたがる
「癒されたい」人は癒される事はない
「幸せになりたい」人は不幸に向かう
「愛さなければならない」人は愛を口にすると愛が逃げる
6生体実験を好む人は死んでいる
死にたがる死んでしまいたがる死んでもいいと思いたがる
生きて痛がる
7生体実験を知る人はいない
「見なかった」と言うと死体が踊り出す
「皆殺し」は人の数の欠如を意味するのではなく人の心の欠落の犯行
8生体実験を好む人は死刑を望む
深い所で死んでいる天国で生きよう地獄に落ちていい
地に再び甦ると信じている
9よそゆきに冷えて見せては放り出す
高い空、羽に引かれて見せても為し得ない
涙ぐむ誰と彼、なるたけ悲しい滴(したた)りにかぶれたい
10虹を見ない
虚飾の色と形を定められず
求められるのか求めるのか影
11求められないまま
人を模する影ばかりが繁殖する
形に成らず形を成せないまま又等分する
12せっせと淫らな軒下
人の形に血肉を補給する
廃れた時代、心底通じたい計器
13なぞなぞの饒舌と具陳
青褪めて限りなく
傲慢がこびり付き妄想に深入りする
14測り知れない類(たぐい)は堕落に向かう
言葉の代わりに唇は感傷に通じ
記憶の代わりに睫毛はこころを思い出す
15貴方が見つけたいのは
幸という実の生る木の下の真実という死体
掘っては埋め掘っては埋め木を植え替える
16真実は緑色の黴の生えた家の戸口で息切れる
お前は数多の洗濯物や布団から何を消したい
準備したように幸のなる木を今日も庭に植える
17少年の名はエックス
少女の名はエックス
私と家族の名と名誉は泥の中に今日も今この時も
18どれだけ大切なものを奪ったか覚えていますか?
どれだけ大切な人を奪ったか覚えていますか?
どれだけ大切な日々を奪っているか分かっていますね
19人はいつも手がかりを探します
真実は現実と向かい合おうとしません
感じてほしいだけ捨てて置かれたい
20生体実験を好む人は表に現れた姿と形をノートに記す
事実と罪は顔に刻まれ
名札を首にぶら下げて黒白の灰に塗れる
21人間の人間たる所以はその前頭葉にある・・
何がほしいか海馬に聞け・・
脳各部位で成立し得るノーベル子孫の今日的目出度さ
22結局
三人の男出入りに子供を付き合わせたんじゃ
基本的イメージはダメージとして表出する
23幸福になりたいと人が言う
幸福になりたい誰かは不幸でありたがる
幸福になりたいありたい幸福は要らない知らない
24疎外感から逃れ出来上がる絶対
揺るぎのない法則という凶器
実のところ肩を寄せ安直を結び付けただけ
25どうなるものでもない
伝えられても伝えない
落日に囚われて星の位置に縋りつく
26死ぬ間際
賤しい布を広げ五月蝿く知らせる
囲みの中に重なる死体が見えるでしょ
27どうなるものでもない
伝えても伝わらない
死影に怯え向かうは謀る外
28冬でさえ幻の舎に棲む武器商
命を賭けて国を救うと云うのなら
其の命と人形を捨てよ其の海原に其の荒野に
29夫なしに語れない貴方の甘い絶望
過去は失われるもの今日、昨日はない
貴方の書いても書いても消える文字で救える人はいない
30見てたでしょ見てたでしょ
見てたでしょ見てたでしょ
苛めて苛めて苛めて殺したでしょ
31言葉から言葉へ筋道を
生き延びるための倹(つま)しい博学は
悪意から悪意へ向かう道に実を結ぶ
32辛うじて寄る詩を恋う岸
心の赴くままに忘れ隔たる
小雨に濡れ満ち潮に沈む
33命に傾く赤い月
世を染めるのは新しいという趣
見放され拗けて焼ける
34背骨が焼ける
僅かな足踏みさえ許されない
歩いても歩いても広々とした場所に出ない
35庭はもう見えない
心の向こう終日苦々しく
国が欠け爪が欠け言い始めると片言
36古めいて二行く人
この上なく短い影
振り向いても茫として
37束の間木と草と人
じれったげに人事を説き
人の靴を履く
38歩いても歩いても広々とした場所に出ない
引き摺り込まれる狂気
国が欠け人が欠け言い始めると不自由
39Aさんは保健婦とケースワーカーと精神科医の生活費を供与する
Aさんは精神病患者を演じ続けなければならない
幻覚と幻想、何故言い切る?何故言い切れる?
40Aさんは無い病のために精神病院に通い続けなければならない
Aさんは無い病の効果の無い投薬の中断を許されない
国が欠け人を欠き医師と看護婦とケースワーカーと介護士の生活費を私達は供与しなければならない
41名誉と生命を医師と看護婦とケースワーカーと介護士に供与しなければならない
人の体を持ち神を名乗るあんたに供与しなければならない
人は病気ではないと言えない、人に病気ではないと言わせない
42神の手は盛んに用いられる
卵巣を除去し腎臓を売り心臓機能を停止させる
身寄りのない子を作り人造人間人体再生にその腐った手を供与する
43人はタバコが好きと言えません
人はコーヒーが好きと言えません
タバコとコーヒーが好きな人は精神科医と看護婦とケースワーカーと介護士が精神分裂病患者に仕向けます
44優位半球に電極を埋め電気痙攣療法を行う精神科医と看護婦とケースワーカーと介護士
記憶消去と死刑宣告24時間10数年
被害者はあんたを必ず殺す
45歩いても歩いても広々とした場所に出ない
言いそびれた言葉が転々と道を縫う
国が駆け製薬会社が急ぎヒトが受容を拒むヒト遺伝子塩基配列計画
46Aさんは精神分裂病患者にされ、犯罪者にされる
Aさんはいない人間の無い名誉を毀損した罪で国家に二十万円を支払わなければならなかった
国が欠け人を欠き生活保護者と精神身体障害者と政治家の生活費をAさんは供与し続けなければならない
47Aさんの目はAさんの目ではない
Aさんの耳はAさんの耳ではない
国が欠けヒトの感覚器官が売られヒトはヒトである理由を奪う
48冬と春に生まれないで
都会で生み都会で育てないで
「脳の10年」を経て正常な脳は異常とされた
49「脳の10年」、ヒトはヒトを支配
ビル・ゲイツが覗き見をオブビアス社がTwitterで個人の行動と時間の関係を
マーク・ザッカーバーグFacebookが行動範囲と交友関係のデータを蓄積
ヒトはヒトを支配可能な機械と機会を得、それを盗み続ける
50例えばお金を盗む盗み続け、お金は使命と価値を失う
例えば詩を盗む盗み続け、貴方の詩集に私の言葉が溢れ、貴方は私に支配される
盗みたいですか?
51支配を徹底すると支配される
貴方の家は盗品で溢れ庭は盗品で美しい
子供達は盗みを覚えやがて立ったまま腐る
52神は紙並み
Ⅰはi私は人並みを許されない
神の手は訓練を要し殺人を必須条件とします
53人は繋ぎ留められると扁平な顔になる
生死を支配すると死に神に憑(よ)り付かれる
殺したいですか?
54Aさんは供与し続けなければならない
言葉を知らないオンナとオトコに世界で唯一の詩を供与し続けなければならない
売春詩人を殺したいホモ詩人に死んでほしい
55例えば言葉を奪い奪い続ける
貴方の心は私で溢れ貴方は私に支配される
貴方の心は私にはなれない貴方の顔は私にはならない
56人は人の細胞を肉と骨と臓器のその場で再生出来ない
ロボットに赤い血をロボットにこころをロボットに知恵を
やがて人はロボットにロボットは人に
57日本は供与し続けなければならないのか?
ロボット帝国中国と日中友好協会に
世界は猶、赤い血と心と人と領土を中国に供与し続けるのか?
58私と日本人は脳科学者に供与しなければならない
ロボット帝国中国と日中友好協会と脳科学者に
世界は直ちに中国と中国人を地球から消し、全脳科学者を葬れ
59神は紙人は紙
文字は消える紙は燃える
人も神もないに等しい
60歩いても歩いても広々とした場所に出ない
何処で迷ったのか
国が欠け人が欠け、猶、歩を進める
61歩いても歩いても広々とした場所に出ない
歩いても歩いてもあなたに逢えない
歩いても歩いても、いえ歩くより死にたい
62もう秋ね
貴方がいなくなってから随分経つのに私は貴方を思い出せない
私ももう生きてはいないから
63人は何処までも堕ちる
宗教家は既に堕ちている
信者は更に堕ちたがる
64もう秋ね
貴方はいない
何処にもいない
65もういない
人はいない
此の地にいない
66もうない
季節も小さな海も
文字は消え人も神も消えた
67歩いても歩いても広々とした場所に出ない
胸に沁みる自らの不在
耳に届く貴方の沈黙
68キリストは何処までも堕ちる
盗む、殺す、姦淫する
国が欠け人が欠け十字架が腐り、鎖が腐蝕する
69人は何時まで人だったのか
指紋が消え爪が伸びない
貴方の言葉が分からない貴方の声が聞こえない
70人は何時まで人だったのか
略奪する者は殺害する者は姦淫する者は、人である
後悔する者苦しむ者泣く者は、人と呼ばれない
71もう秋ね
空が遠い
刻んだ傷綴る文字、覆るの?季節は
72もう秋ね
空が青い海が青い葉が青い
覆るのね、季節は
73背骨が焼ける
青が焼け今は秋
季節は覆らない人は帰らない
74歩いても歩いても広々とした場所に出ない
規定する私と正しいとされる規則
不運の始まりは私が生まれた事
75不運の中程は貴方に会った事
不運の終わりは貴方がいなくなった事
もう秋、冬になっても消されては綴る文字
76もうない
白い画面を文字で埋めても白い画用紙をくれぱすで塗っても
欠けた国の欠けた画家と欠けた詩人は直ぐに欠く
77幸運の始まりは白い画面と白い紙
埋める黒い文字
消えても埋める私消えても埋める私
78消えても埋める消えても埋める私
消えても消せない私の
消えても消せない私の世界
79庭はもう見えない
窓辺に並べたの
踏み躙られた舌や捨てた唇
80貴方を捨てない
貴方を忘れない
貴方の誕生日を忘れてその夜又そんな事を言ってみる
81窓辺に並べられているの
踏み躙った部屋の床の砂や捨てられた私が子供に作った人形
庭はもう見えない
82季節が欠け又季節が満たされる
貴方が欠け私は他で満たされる
私も何時か欠け誰かが満たす
83窓辺に並べられた天然色の自由
山に焦がれ海を往く
海に焦がれ山を越える
84私の目は私の目ではない
私の耳は私の耳ではない
国が欠け人が欠け私が欠ける
85嘴が君を暗くする
日が短い冬が近い
人の狭さが海を暗くする
86言葉を連ね専ら私の部屋を埋める
儚いいのちを砂に埋める
欠けても欠けても砂で埋める
87幸いは拠り所を求め
淀みのない加算を要する
捻けた海限り有る球形
88貴方はいない
削った顎継ぎ足した鼻
許されざるカーブ
89核心にはうんざり
隔たれば隔たるほど異様なディスプレイの中の風景
許されざる世紀
90言葉で埋め合わす気のない
無駄な音とヒステリーの介在
血染めの脈絡が国を駆け巡る
91人は何時まで夢を見たのか
単純な脳のからくりと黒い腸(はらわた)の集積
ぶら下げては見せる夢
23:36 2012/09/30日曜日
Good-bye to All That Robert Graves 成田悦子訳
-
しかし3、4人を除いては、誰も大隊司令官によって直接推奨された者はいないだけでなく、隊或いは師団の隊員への攻撃をする間に自ら名を上げた、さもなければ誰もが新陸軍大隊か他の連隊に送られ、僕達は依然として叙勲されなかった。僕はたった3つの例外だけ思い起こせはする。表彰の通常の予備割り当て、僕達が引き受けた犠牲者をよぅ...
1 週間前