2014年5月11日日曜日

犠牲/柳田邦男を読む「サクリファイス犠牲わが息子・脳死の11日」170

犠牲

漂う砂に包(くる)まれて足が追う
やわらかに絡む茎
水が綴るのは前触れ
青く錆を帯びて
逃げる僕の席

僕は籠で吠(な)く鳥
生まれ落ち、海を志す
唯一つでありたい
只生きていたい

今は生きる意味を教えないで
生きられない分けを掻き集めないで
暮れる夕ベ
沈む陽
なみだを流す僕

目が眩むほど違っている
改めなければならない眼差しの構造
装い始めると果てしがないこの唇
掴えて感じさせ煩しいと隅に追い遣る

流れる時
漠とした砂の原
繰り返す波の往き来
僕は籠で吠(な)く
唯一つでありたい
只生きていたい

生き延びて、海へ
避けられない轍(わだち)を拠り所とし
戯れの砂を頬張り
偽りの空を高く飛ぶ

23:31 2014/05/11日曜日