2012年2月18日土曜日

存在 台所では

台所では一刻も早く意識を失い
嫌悪を丸め込み
明瞭を閉じ込め
夜明けまでに肝心のことは振り捨てて
打ち明けるとしたら一言二言

台所では
言わなくてもいい自分がトマトに似てしまうので恥ずかしい
理不尽に駆け寄っては
母は暗い窓の向こうを見詰め泣いていた
開けっ放した戸から引っ張り込みたい希望
私は母の後ろで分別というものの哀れを知った

台所では
爪を齧る
林檎を齧る
途方に暮れた気分を貪る
辱められた生命(いのち)
曖昧で暖めて噂話に花を咲かせる

そして何だか肩の方へ 
肘をついた指に触れず
台所では根ほり葉ほり
聞くことにも夢中になれない
母は料理を並べて見せた
逃げ出さずに不自由を握り締めていた

21:53 2012/02/18土曜日