2012年1月30日月曜日

支配 幸福

私は生まれて安らかで
私は私であった
私は未だ言葉を持たず
私が保たれた

春の日の薄い花
浅い海の薄い貝
砂の底の生の証明
手と足
腹と背
ひとつなぎの私の家を有(も)った

私と人の区分けには
私の位置が
私の言葉が
私のくちびるがなければならなかった
私の家と人の家の間に壁がなければならなかった
私の家と人の家の間に自由がなければならない
女の家と男の家に自由がなければならない
女と男の間に壁がなければならない
女と男の間にくちびるがなければならない
女の位置と男の位置がなければならない

私が主体であるために名誉がなければならなかった
名誉はいのちである
私は述懐を強いられず
誰にも述懐しない

私はいつか私であることを離れ
生きて行くにつれ
幸福であるか
不幸であるかにこころを奪われた
私は不幸に片寄る言葉だけを覚え、幸福を蓄える言葉を覚えられなかった

22:03 2012/01/30月曜日